京都の住所検索の現状調査2010年版

ジオメディアサミット名古屋の懇親会で、Yahoo!地図のみなさんとジオどすの話をさせて頂いてた。
ちょうど、先日、読売新聞が「京の通り名不要！？ネットで地図検索できず」という記事を夕刊一面に掲載したこともあり、話題のネタだ。Yahoo!さんには読売の転載記事の下に「ジオどす」のリンクを掲載して頂き、記事の直後３日だけ（苦笑）訪問者が急増したこともあった。
で、Yahoo!地図では通り名が検索できる、という事になっているらしい。私の以前の調査（2008年11月時点）では

• Navitimeは一般的な通り名住所が単独で検索できる。
• Yahoo!地図は通り名＋郵便住所の複合住所表記なら検索可能。
• 他社は通り名が混ざると一切検索できない。

だったので、Yahoo!地図さん改良されたのかな、と思い、帰ってきて検索してみた。
結果は「？」。というか検索出来ているような出来ていないような、、、、。

ある程度思い当たるフシがあるので、久々にWEB地図各社の京都対応状況を調べてみた。

その前、京都の住所についておさらい。

1.

京都には「◯◯町〇〇番地」という、いわゆる『郵便住所』が、全国の他の地域と同様きちんと整備されている。運転免許やパスポートに使う住所はこれになる。
京都市役所の郵便住所は「京都市中京区上本能寺前町446番地」だ。

2.

これとは別に、京都市内中心部では「四条烏丸上ル」などのいわゆる『通り名による伝統的な住所表記』が日常生活では使われており、郵便住所はほとんど使われない。
ガイドブックもお店の名刺も、ほぼ100%通り名住所だ。
京都市役所の通り名住所は「京都市中京区寺町通御池上ル」

3.

さらに最近はWEB媒体を中心に「通り名住所＋郵便住所」という複合表記が増えている。
京都市役所の複合住所は「京都市中京区寺町通御池上ル上本能寺前町488番地」。

さて、結果から。

はっきり言って、ジオどす以外で、通り名がちゃんと検索できるのはNAVITIMEのみでした。

以下、詳細。

まずは京都市役所の通り名住所「京都市中京区寺町通御池上ル」で検索。

NAVITIME： ちゃんと寺町通と御池通の交差点から少し北を示す。「寺町通御池上る(ルをひらがなにしてみた)」「寺町御池上る(通を抜いてみた)」「御池寺町上ル(順序を逆にした)」などバリエーションを変えても付いてくる。ジオどすと同じように、通り名から交差点を決定し、そこから「上ル」「下ル」「東入ル」などに応じて少しシフトしているようだ。さらに店舗等の情報からの逆引きもいい具合に組み合わさってカバー範囲を広げている。優秀！
ジオどすが勝っている点としては、店舗情報からの逆引きができない住宅地の通り名や、マイナーな通り、通りの別名・俗称などのケース、かな。店舗や観光の「ナビ」として使うにはNAVITIMEで充分カバーできる。（NAVITIMEで検索できないときは「ジオどす」へ。ジオどす検索結果からNAVITIMEにリンクできます！）

GoogleMaps:通り名そのものはヒットしない。が、通り名を含む店舗情報や口コミ情報などから該当するレストラン等のスポットがマーカーで示される。バリエーションを変えてもそれなりに情報を拾ってくるので、微妙にマーカー郡の位置はかわるが、まあそれなりに「この辺りかな・・・」くらいは分かるので、まあ実用には使えなくもない。

Yahoo!地図:トップの住所検索からは全くヒットしない。今回は京都市役所の住所なので、「ランドマーク検索」の結果に引っかかった。
ただし、京都市内の地図を表示し、周辺検索っぽいことをすると、通り名でも検索ができることがある。が、結果が何かおかしい。京都市役所の「寺町通御池」で検索すると、京都市役所になるし、「通」を取って「寺町御池」とすると、少しずれた箇所(御池通で麸屋町と御幸町の間あたり)を指す。同様に「押小路通麸屋町下ル」は検索できたが、「押小路通麸屋町上ル」は検索できない。また「三条通高倉上ル」は京都文化博物館を指す（位置的には正しい）が、「上ル」を抜いて「高倉通三条」とすると、なんとかなり東の「御幸町通三条下がる」あたりに飛ぶ。はっきり言って、一見検索できているように見えて、デタラメを指す率がかなり高い。これは、ちょっと困ります。。。

ちず丸:検索できず。

いつもナビ:検索できず。ただし、「京都市中京区寺町通御池上ル」が含まれる施設、「京都市中京区寺町通御池上ル」が含まれる電話帳、などのエントリで店舗情報などから逆引きしてきている。

MapFan:検索できず。

Goo地図:該当する住所が一件あります、と出るがその住所が「京都市中京区」。おいおい。

Mapion:検索できず。潔くも「通り名には対応していません」と書いてある。ただし、こちらもGoogleやいつもナビ同様、店舗情報などでヒットしたものが出てくるので、実用性はなくもない。

次に京都市役所の複合住所「京都市中京区寺町通御池上ル上本能寺前町488番地」で検索。

NAVITIME:「京都市中京区寺町通御池上ル」の通り名部分でヒット！なかなかやる！

GoogleMaps:「京都府京都市中京区上本能寺前町４８８ 付近の  京都市中京区寺町通御池上ル」という結果が出てくる。結果は情報コンテンツからの逆引きであることは同じ。ある意味、直接のジオコードよりもUGCから拾ってくる方が現実的かも。

Yahoo!地図:ちゃんと京都市役所を指しました。ただ、複合住所なら全てOKというわけではなさそう。ほとんどの場合、検索できない。ランドマークか何かの情報にヒットしたときのみ出ている様子。

ちず丸:通り名を省いた「京都市中京区上本能寺前町４８８」でヒット。優秀。

いつもNAVI: 検索が一件でるも「京都市中京区」。おいおい。

MapFan:「京都市中京区寺町通御池上ル上本能寺前町488」でヒット。住所情報か逆引きっぽい。

Goo地図:検索が一件でるも「京都市中京区」。おいおい。

Mapion:検索出来ず。

番外編

京都には一見「通り名住所＋郵便住所の複合表記」に見えて、実はそうじゃない住所があります。

ここで、京都市の郵便住所独自の問題がある。京都市内のいわゆる「町」割は非常に細かく、沢山の「町」がある。同一の区内で同名の「町」が複数存在することも多い。さらに番地の排他は保証されておらず、番地まで同じになる可能性もある。重複している郵便住所で、同一名称の「町」を区別するにはどうするか。これには解決法が二つしか無い。

1. それぞれに異なる郵便番号を割り当てる（だけら京都市の郵便番号は非常に多い）
2. 通り名と組み合わせることで、どの「◯◯町」かを示す。

つまり、同一区内の重複する町名に関しては、郵便番号を使わなければ、通り名を用いずに純粋な郵便住所だけで表すことは原理的に不可能ということになる。
日本郵便のサイトで郵便番号を見てみよう。例えば京都市中京区「鍵屋町」は二つある。
〒604-0801 京都市中京区鍵屋町（丸太町通堺町東入、丸太町通堺町西入、丸太町通柳馬場東入、丸太町通高倉東入）
〒604-0832 京都市中京区鍵屋町（間之町通二条下る、間之町通押小路上る）

この場合、604-0801の「鍵屋町」には書き方の一つとして「丸太町通堺町東入鍵屋町」と書くことができる。これは丸太町通と堺町通りの交差点から東に行ったところにある「鍵屋町」という意味になる。この「鍵屋町」には当然他の方向からも行き方もあり、それが丸太町通堺町西入鍵屋町、丸太町通柳馬場東入鍵屋町、丸太町通高倉東入鍵屋町などとなる。

この場合は、住所文字中の「通り名」に見える部分は、「町」を特定するための補助的な修飾子という意味になる。
だからこの場合、「（場所を表す）通り名住所」に「郵便住所」を付加した「複合住所」というよりは、純粋な「郵便住所」に町名特定のための修飾子（＝通り名）が付いているといえる。これを通り名と混同されている人が多いので、違いを強調するために、あえてこれを「通り名補助付き郵便住所」と呼ぼう。

で、この重複する町名がちゃんと検索できるかどうか、これも興味深いので「京都市中京区鍵屋町」で試してみた。なお、郵便番号を直接入力して検索した場合、各社とも正常に検索できることは予めお伝えしておく。

まずは、通り名指定無しの「京都市中京区鍵屋町」で検索。（どちらかわからないケース）

NAVITIME：候補に「京都市中京区鍵屋町」が二つ出てきた。クリックするとそれぞれの「鍵屋町」を指しているが、候補の時点ではどちらか分からない。

GoogleMaps:「京都市京都市中京区鍵屋町(丸太町通)」でヒットするも、他の候補として「京都府京都市中京区鍵屋町(間之町通)と出てくる。

Yahoo!地図:無条件に「〒604-0801 京都市中京区鍵屋町（丸太町通堺町東入）」を指す！！そんな乱暴な！もう一つの「鍵屋町」にたどり着くには、郵便番号を指定するしかない、、、

ちず丸:無条件に「〒604-0832 京都市中京区鍵屋町（間之町通二条下る）」を指す！！そんな乱暴な！もう一つの「鍵屋町」にたどり着くには、郵便番号を指定するしかない、、、。

いつもナビ：「京都府京都市中京区鍵屋町（間之町通）」と「京都府京都市中京区鍵屋町（丸太町通）」の選択。OK!

MapFan:以下から選択。実体は二つしかないのだが、郵便番号データベースのまんま。
「〒604-0801 京都府京都市中京区鍵屋町」
「〒604-0801 京都府京都市中京区丸太町通堺町西入鍵屋町」
「〒604-0801 京都府京都市中京区丸太町通堺町東入鍵屋町」
「〒604-0801 京都府京都市中京区丸太町通柳馬場西入鍵屋町」
「〒604-0832 京都府京都市中京区鍵屋町」
「〒604-0832 京都府京都市中京区間之町通押小路上る鍵屋町」
「〒604-0832 京都府京都市中京区間之町通二条下る鍵屋町」

Goo地図:「京都府京都市中京区鍵屋町（間之町通）」と「京都府京都市中京区鍵屋町（丸太町通）」の選択。OK!

Mapion:「京都府京都市中京区鍵屋町（間之町通）」と「京都府京都市中京区鍵屋町（丸太町通）」の選択。OK!

次に通り名補助付き郵便住所として「京都府京都市中京区丸太町通堺町西入鍵屋町」と「京都府京都市中京区間之町通押小路上る鍵屋町」のそれぞれで検索

NAVITIME:通り名の部分までで、通り名として検索

GoogleMaps:こちらも情報からの逆引き。ジオコードはしていない。

Yahoo!地図：どちらで検索しても「京都府京都市中京区丸太町通堺町西入鍵屋町」になってしまう！！そんな乱暴な！

ちず丸:どちらで検索しても「京都府京都市中京区鍵屋町」になりクリックすると「京都府京都市中京区間之町通押小路上る鍵屋町」になる！！そんな乱暴な！

いつもNAVI:上記のような形で通り名が挿入されると検索できない。

MapFan:どちらもそのまま検索できた。通り名には対応していないが、通り名補助付き郵便住所には対応している。つまり、郵便番号データに掲載されている範囲に限り、通り名には対応している。ちょっと実験
「京都府京都市中京区丸太町通堺町西入鍵屋町」→「京都府京都市中京区丸太町通堺町西入ル鍵屋町」（ルを付加）　検索できず
「京都府京都市中京区間之町通押小路上る鍵屋町」→「京都府京都市中京区間之町通押小路上鍵屋町」（るを取る）　検索できず
「京都府京都市中京区間之町通押小路上る鍵屋町」→「京都府京都市中京区間之町通押小路上ル鍵屋町」（るをカタカナに）　検索OK
ひらがなカタカナは区別なし、基本は郵便番号データそのままでないと検索不可のようだ。

Goo地図:
「京都府京都市中京区丸太町通堺町西入鍵屋町」→「京都府京都市中京区丸太町」にヒット 違う場所！！それは「まるたまち通」ではなく「まるたちょう」！！
「京都府京都市中京区間之町通押小路上る鍵屋町」→「京都府京都市中京区」にヒット。要はヒットしてない

Mapion:どちらも検索できず、ヒットした店舗情報が出てくる。

という訳で、長々をテストしてきました。スクリーンショットを沢山取ったけど、文章だけでいいかな。

NAVITIMEだけがまともに通り名を検索できる。（もちろんジオどすの方がより検出率が高い自信はある）。

地図各社とも、いろいろ話を伺っていると、京都の住所は長年課題と認識しつつも、

• 京都だけにコストをかけられない
  需要がそんなにない
  顧客から声が上がってこない

などの理由で、各社ともほぼ永遠の先送り課題になっている様子。

ジオどすを使ぅて欲しいなぁ。